2012

01.29

The Little Stranger

The Little StrangerThe Little Stranger
(2010/01/05)
Sarah Waters

商品詳細を見る

今年第一冊目。
久々に本を読んで衝撃を受けました。
たぶん、The Curious Incident of the Dog in the Night-Time (Vintage Contemporaries)を読んで以来。

最近読んでいた本はすべてライトノベルだったのかと思ってしまったほどでした。
これも、2 for 1セールで表紙を見て買ったものだったので、内容はおろか、Sarah Watersも知らなかったんです。
文のスタイルも内容も知らず読み始め、あっという間に引き込まれました。

以下ネタバレあり。
途中まで、超自然現象が出てくるなんて思いもしなかったので、途中でいきなり話が急展開した時に、初めて裏表紙を読み(私の中では禁断)、怖い話であることを発見。
しかし、その頃にはもう小説にのめりこみ、やめるなんてありえなかったので、布団の中で読んでいたのを、電車での移動時に変更。(笑)

これは、日本家屋で日本の冬晴れの元で読むと、小説の世界にものすごく入りにくいです。
そもそも、私は当然、いわゆるマンションと言われるような豪邸には入ったことがないのですが、描写してある冬の暗さ、寒さ、そしてその中での孤立感はわかっているとぐっと世界に入り込みやすくなりました。
おそらく、これは、冬のイギリスで読んだら、相当怖かったと思います。
当時のおじいちゃんの家は、かなり古いもので(当然豪邸でなくコテージでしたが)、何かいると盛んに半分冗談でみんなが言っていたので、あの環境で読んだら、トイレなんて行けなかったと思います。

とはいえ、本題は超常現象だけに限られているわけではないのがこの本の興味深いところなんですよね。
戦後、それまでの階級に変化が起こり始め、労働階級が力を持ってきます。
そんな中、物語の中心である、Hundreds Hallでは、昔の豪奢さはなくなり、多くの部屋は閉じられ、家は荒廃していきます。
そんな中でも、特にMrs.Ayersはマナーや考え方は戦前の階級をそのまま残しつつ、荒廃した家に住み、ほつれのあるドレスに身を包んで、時代的変化の波に取り残されています。
Hundreds Hall自体が、豪邸以外に広大な土地を有し、隔離された状態であることが、この話の中でかなり重要な要素であると思います。
この時代的変化を端的に表しており、Baker-Hyde一家の描写はAyers家を引き立たせる意味で素晴らしかったと思います。
冬の雪深い時期に、そのせいで、落ちぶれた豪邸はさらに孤立感をまして、超自然的な現象も現実世界と切り離されたところで起こっているような印象を与えます。

Dr.Faradayもまた、階級の差から、医者ではあっても、居心地の悪い思いをしたり、ねたみや僻みが出てきます。
しかし、彼が診察する患者の中には、労働階級の底辺のような人たちが出てきて、とにかく、小説を通じて、階級を強く意識させられます。
Bettyの言葉遣いとMrs.Ayersの言葉遣いの違いなども、その場を傍観しているような気分にさせられました。

Roderickのクライマックスでの描写はかなり怖かったですが、その後の超常現象はそこまで怖くなかった。
たぶんここら辺から、実際に超常現象が起こっているのか、精神的なものなのか、大きすぎる家がそうさせるのか、だんだんと分からなくなってくるからだと思います。
結局、最後までCarolineがYou!と叫んだものがなんであったのかはわかりません。
私の印象としては、精神的なものではあるけれど、病的、もしくは精神異常を来たしたものというよりは、この時代と、戦後の経験、そして、何より荒廃した家で、あまり明かりもなく、何かが見えるよう、もしくは聞こえるような状態に追い詰められていったのかな、と思いました。

そう信じ込めば、だんだん怖くなってくるし、そこに何かがいるような気がしてしまうことって、ありますよね。
はっきりは覚えていないのですが、学生で実験をして、暗い部屋で、学生に机の周りに手をつないで座ってもらうと、恐怖が伝染してパニックになる、というものをテレビで見たことがありました。実験は結局中止になった気がします。

普通は終わり方が謎めいている小説ってもやもやして好きではないのですが、この小説はこれで良かった。

Sarah Watersは初めて読んだのですが、文のスタイルがとても好きだったので、他のものも読んでみようと思います。
静かに、過剰な描写なしに、だけど確実に緊張感が増していく文体でした。

機会があれば、ぜひ読んでみてほしい本です。
スポンサーサイト


トラックバック(0)  コメント(0) 

Next |  Back

comments

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可
trackback
この記事のトラックバックURL